エボニー指板、豪華多層バインディング、6ポジションのバリトーンスイッチが付いたGibson ES-355をベースに、fホールを廃して裏にメンテナンスホールを開け、ヘッドにマザーオブパールでLucilleのインレイが入っている。ポジションマークも同じくマザーオブパールとともかく豪華な仕様。1995年Gibsonナッシュビル工場製。
カラーは人気薄の赤ルシール(B.B.Kingモデルなので圧倒的に黒が多い)で、ゴールドの社外品Maestro Vibrolaが取り付けてあり、取り付け穴跡も余計に開いている。
’95年のカタログ。安い ¥250,000。
https://do9scrapbook.com/wp-content/uploads/2023/04/Gibson_1995_Catalog.pdf
’96年カタログ。ES-335は¥252,000→¥272,000に値上げされているがLucilleは価格据え置き。
https://do9scrapbook.com/wp-content/uploads/2023/04/Gibson_1996_Catalog.pdf
Groverに交換されている。
ストラップピンの辺りを良く見ると3ピースネックなのがわかる。
裏はけっこう細かいウェザーチェックが入っている
バリトーンスイッチ以外の特徴は、3ピースメイプルネック、モノラル+ステレオのアウトプット、ナッシュビルTOM、ベッコウ柄セルロイドにバインディングを巻いたES-335などと比べ高級な仕様のピックガード。重量は4.68kg(ヴァイブローラ290g込み)とかなり重め。Lucilleはボディ表面にはジャックは無いはずだがこの個体にはバリトーンスイッチの下の335と同じ位置に(モノラル)ジャックが追加されている。
カタログなどで見る限りピックアップは490Rと490Tのはずだが開けてみるとPAFシールの剥がれかけがあり、USAが刻まれていない。フロント7.4K、リア7.5Kと前後の値が近いのでおそらく57Classicと思われる。ブリッジはナッシュビル製造だけにナッシュビルタイプTOM。フロントキャビティにカラー”CH”、リアキャビティにmodel名 “ARLC”。リアピックアップ下に見えるのはVaritone用のCholk Coil。
※後に判明するがミックス時フェイズしている。仕様かと思ったらLucilleのピックアップは前後で位相を逆にしているそうだ。このLucilleは57 Classicを後付けしているのでミックスがフェイズしているということに。
回路はオリジナルのまま、表面のモノラル出力ジャックとヴァイブローラーのアース線が追加されている。スタッドボルト下のアース線も生きていて配線されたまま。青い板状のパーツがついたバリトーン(Varitone)のスイッチ。緑の線の行き先が、ピックアップ下にあるチョークコイル。ステレオジャック、バリトーンこの2つのアース線が多いせいで密集していてフロントVolポットの背はほとんど見えなくなっている。
Lucilleのwiring。見て描いたので少し違っているかもしれないが通常の回路の間にVaritoneを入れたのでなく入口出口がそもそも違う。(現在の図はver2 多少修正している。ポットの値は実測値からの推察仕様)
Gibson 1991年カタログにはわりと詳しくVaritoneについて書かれている The Varitone Control This Control works through a reduction of the fundamental harmonic frequencies. The higher the setting, the greater the loss of similer to a single-coil pickup. The total characteristics are listed bellow. Position 1 : bypass Position 2 : minus 5db at 1950hz Position 3 : minus 12db at 1100hz Position 4 : minus 16db at 620hz Position 5 : minus 18.5db at 360hz Position 6 : minus 21db at 120hz https://do9scrapbook.com/wp-content/uploads/2023/05/Gibson_1991_Catalog.pdf
側面のジャックは、右がリア(モノラルジャック)、左がフロントの出力(ワッシャーがシルバー。ステレオジャック)。
ヴァイブローラーは2種類の取り付け方が可能。一度目はストラップピンのある底面側には取り付けず、ボディ表面に4箇所の小ネジでベースを固定したと思われる。この方法だとブリッジに近くなり弦のテンション感が足りなくなるので現在の取り付け方に変更したのかもしれない。
Varitoneスイッチは5種類の異なる帯域をカットするよう仕組み。特定の周波数以下をカットするのでなくチョークコイルを通って特定の周波数帯をカットしている。ギターの聴こえる帯域は元々たいして広く無いので特定周波数カットすると低域がまるで無くなったように聴こえたり、中域がゴッソリ無くなってるように聴こえたりする。5バンドグライコのどれか1つをゼロにするような仕掛け。聴感上ボリュームの大きな中域を削るので2〜6だと音量もかなり下がる。
Lucilleの配線をわかりやすくする
ノーマルの配線のままでは、位相の逆のピックアップ(前後どちらでも構わないが)を交換するのさえ困難なのでまずはブレイデッドワイヤーを全て取り除き分かりやすい感じにしてみた。
ポットはすべてGibson純正だが、Volは300K、Toneは500K、650Kなどが付いていたのでA500Kに全て変更。
何度かやり直して6枚目の形に。
↓このあとはこちらのページに続きがある
Gibson Lucilleのパーツ交換
ヴァイブローラー仕様も悪くはないけどTP-6 Tailpiece仕様に戻してみる。ちょうどゴールドのノンワイヤーABR-1が入手できたのでついでにナッシュビルのTOMを変更してみる。ABR-1用のアダプターはVintage Maniacs製。この仕様だと重量は4.4kg。280gほど軽くなった。
Gibson純正のロトマチックが入手できたのでGroverを交換。幸い固定ピンの穴は埋められていなかったのでそのまま利用できた。
オリジナルの金属製B.B.King文字入りロッドカバーに交換。Groverの取り付け穴は埋めた。
TOMはナッシュビルに戻した。ヴァイブローラーの取り付け穴はまた付けたくなることもありそうなので穴はそのまま。ジャックの増設以外はオリジナル状態に戻った。